海外で生活するということは、自分の生まれ育った国で生活することと全く違うように見えて、違うところもありつつ、似通った生活をすることになります。
よく知られているように、縁もゆかりもない場所で生活を始めるということは結構な苦労を伴います。言語の違い、文化の違い、孤独感との戦い。思うように行かなくて悩むことは絶えず、苦しくて、いい大人なのに涙が出てくることもあります。
移住すると、仕事はしないとお金が稼げないし、お金がないと生活ができないし、朝起きて仕事に行って、仕事を終えて帰って、寝て起きてまた仕事に行く。これって正直、母国(日本)での生活と一緒じゃない?
海外移住してもっと自分らしい生活をするんだ、ということを目標にしていた人は現実とのギャップで心が折れる人が多いと思います。思ったより生活は苦しいし、キャリアダウンしてしまっているし、言語の壁が高く不自由を感じることも多々あります。現に、IT企業の営業として新卒から仕事をしていた時と比べて、現在の年収は半分以下、語学学校の学生アドバイザーの仕事はエントリーレベルで誰でもできる内容で、スキルとして身についているものはない気がするし、生活に余裕はないし、好きなものや欲しいものは買えません。それでもカナダに残っている理由は2つあって、時間的余裕があること、英語が好きなこと。
一つ目は、明白だけど、日本での仕事は本当に長時間労働でした。朝6時に起きて7時半には家を出て、9時出社。そこから仕事をして12時から1時間のお昼休憩を経て、18時に定時。でも定時退社などできるはずなく、残業を最低1時間して20時前に帰路につき、21時半頃に帰宅、夜ご飯を食べて、お風呂入って24時前にやっと就寝。朝の準備の時間と夜の就寝準備を含めると6時から23時まで、17時間の仕事に関する時間を1日で過ごしていました。これでは自分の時間(勉強とか運動とか)の時間を取るのは私のとっては難しいことでした。もちろんこれは毎日じゃないし、通勤時間とか合間時間にやればいいのではって声は聞こえてきそうですが、人混みでのパニック障害的な症状を抱えた私には簡単なことではなく、通勤時間くらいしかゲームをしたりNetflixを見たりする時間がなかったのが実情でした。だから合間時間は私の楽しみの時間で、なんでこんなに働いてるのって感じだけど、正直のところ、これは生活残業も多少あった気はしています。
この生活をしていた身からすると、今の生活は本当に時間的余裕があります。バンクーバーはそんなに大きな街でないので、通勤時間は30分程度ですし、仕事は絶対時間通り終わる。8時間拘束で1時間の昼休憩だから実働時間7時間で、アフター5の時間の充実度が違います。早いシフトの日はカフェに行って作業や勉強ができ、遅い日でもジムでの運動ができます。そのあと友達とご飯に行くのも余裕です。よく大学生の時、学生はお金はないけど時間はある、社会人は時間はないけどお金はある、の二択だって話を聞いてましたが、今の生活は学生寄りだけど金銭的余裕は多少あって、それが私にはすごくあっている生活スタイルだなと実感しています。
二つ目は、英語が好きで、それを使える環境にいるだけでも自分自身の幸せを感じるし、生活に対する満足感があるということです。正直余裕のある生活ではなくて、まだまだ英語も勉強中で完璧からは程遠いですが、やはり人生において一つでもこの生活のここが大好きで満足している、という部分があるのは大切なことで生活の質が変わってくるところだと思っています。それは別にどこにいても同じで、人によっては、今の仕事が夢の仕事で本当に好きとか、この街が好きとか、家族が一緒にいられるこの環境が大切とか、そういうことでいいんだと思います。自分の中でとても価値があることを忘れずにいられると、辛いこととか悲しいことがあっても、その場所で踏ん張れるって私は信じています。
なんだかとても長い文章になってしまいましたが、外国で生活することは、私にとって夢でしたし、その夢を叶えられているっていう事実が私の自尊心を支えているとおもいます。やはり楽しいことばかりではないですが、自分の中で価値のあることを実践できる環境で生活し続けられるから、たとえ母国での生活と同じような朝起きて仕事に行って帰るスタイルでも、外国に残り続けているのだと思います。